古事記のゼミを、M大H学部で開講してもう20年になるだろうか? M大を定年退職するまでには、古事記論を書きたいと思いながら、その余裕がない。
古事記にはさまざまな謎があるが、その部分部分の読解や継ぎはぎ構造の分析など、いくらか解明できたが、基本的にはスクランブルがかかっているような不可解さが残る。
ある本では、天武天皇が編纂を命じ、各王朝の子孫に素案を提出させたが、天武没後、その妻持統天皇が集まった素案を読んで、王朝交代のどろどろした話ばかりで、嫌気がさし、いい話を創作させたと主張している。この本の著者は、出雲王朝の末裔と自称しているが、徐福、スサノオ、ニギハヤヒが同一人物だと言ったり、天智天皇と天武天皇は兄弟であることを疑わない点は信用できない。
しかし、王朝交代の血なまぐささを消して、万世一系の虚構を設定し、さまざまな作り話をつなぎ合わせたとの考え方は、記紀の基本的な不可解さの原因を最もうまく説明しているように思える。
持統天皇は、血なまぐさい話を嫌いながら、わが子草壁皇子を天皇にしたいため、文武にすぐれた大津皇子に謀反の濡れ衣を着せて処刑している。
記紀のうち、とくに古事記は、出雲神話の比重が大きい。これは、出雲に最古の王朝が生まれた事実を無視できなかったからであり、出雲に所縁のある多氏が編纂に関与しているからのようだ。
多(太)は、太陽祭祀、製鉄、軍事に携わる古い氏族。
大国主はスサノオの後続世代とされているが、そうではなく、代々続く出雲王国へスサノオが渡来して、出雲を混乱させたと考えるのがいいようだ。
星や鉄からの分析もできるがこれはここでは語りつくせない。
血と星と朝日のにおいわれらの神話 夏石番矢
参照
古事記ノート(33) ゴーン、天皇、上皇、酔胡王の共通性
https://banyaarchives.seesaa.net/article/202001article_5.html?1586220779
古事記ノート(32) 安曇磯良はシリウス
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201912article_1.html?1586220509
真鍋大覚『儺の國の星』を読み切る
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201909article_29.html
古事記ノート(31) シリウスがわかる
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201911article_31.html?1586220246
古事記ノート(30)
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201812article_17.html
古事記ノート(29) 羽根、網などの等式
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201804article_29.html
古事記ノート(28) 序文偽書説についての発表
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201711article_15.html
古事記ノート(27) ツノグイとイクグイ
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201701article_11.html
古事記ノート(26) 黄泉の雷
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201602article_29.html
古事記ノート(25) 日朝をつなぐイナヒ
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201311article_29.html
古事記ノート(24) 阿曇族について
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201309article_37.html
古事記ノート(23) 序文の「天皇」と「皇帝」
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201306article_14.html
古事記ノート(22) 葦と鉄と鈴と稲
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201301article_23.html
古事記ノート(21) 国引き神話1
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_29.html
古事記ノート(20) ツムガリの大刀とは?
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_23.html
古事記ノート(19) ヤマタノオロチは出雲にいなかった?
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_22.html
古事記ノート(18) 天の死と更新
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_14.html
古事記ノート(17) 仏訳古事記入手
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201207article_15.html
古事記ノート(16) 南への回路
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201206article_32.html
古事記ノート(15) 台湾の神話を読む
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201206article_28.html
古事記ノート(14) 声と死体の蝿
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201206article_27.html
古事記ノート(13) 九州の三国
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201007article_23.html
『古事記』ノート(12) 隕鉄の剣
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200912article_10.html
4300年前…最古の鉄剣の謎解明 原料は隕石だった!
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080903/trd0809030129000-n1.htm
『古事記』ノート(11) 命の主
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200911article_23.html
『古事記』ノート(10) 天之御中主ふたたび
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200911article_22.html
『古事記』ノート(9) 天の御柱と八尋殿 を見立てる
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200812article_4.html
『古事記』ノート(8) おのごろ島生成
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200811article_25.html
『古事記』ノート(7) 神代七代3
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200806article_34.html
『古事記』ノート(6) 神代七代2
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200806article_29.html
『古事記』ノート(5) 神代七代1
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200806article_25.html
『古事記ノート』(4) 天之御中主神の正体
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200806article_3.html
『古事記ノート』(3) その語り始めの唯名論
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200805article_45.html
『古事記』ノート(2) 天之御中主神は不在?
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200805article_26.html
『古事記』ノート(1) 革命者としての天武天皇
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200805article_11.html
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