田村雅之編集者五十年を祝う会

2019年3月9日(土)夕方の3時間、新宿三井クラブで、

田村雅之編集者五十年を祝う会

が開かれ、出席。発起人の名前に歌人の三井修さんがあり、三井財閥の方かと思い、この会にどういう服装で出席すればいいか迷った。

三井修さんは、三井系の会社に勤めていらしたが、三井財閥の支配家族とは無縁ということが、この日の会場でわかる。

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出席者の最長老は、歌人の馬場あき子さん。99歳で和服姿。

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全体として、歌人の団結力を示した会だった。俳人は、齋藤愼爾と夏石のみ。

歌人で早大教授の内藤明さんは、娘のゼミの先生だったので、お礼やら卒業後のことなど話す。今年の彼女の結婚や第一句集出版のことも。内藤さんは笑顔で受け答えしてくださった。

お名前はかなり前から存じ上げていた花山多佳子さんと初めてことばを交わす。私の母方の祖母は、花山りか。

一番よくお話したのは、文芸評論家の月村敏行さん。月村さんは、スピーが並外れて長いので有名。

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田村さんの、明治大学商学部学生時代からの聡明さ、編集者としての辣腕、酒癖の悪さ、それでも愛情あふれる著者とのやり取りなども、この宴で次第に披露された。

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私は、学生時代、購入した本の著者後書に「田村雅之」の名をよく見かけた。これは田村さんの国文社時代のこと。私の大学生時代の読書体験の何割かは、この名編集者が生み出した。

田村さんが砂子屋書房の共同責任者となってからは、1980年代の折口信夫研究会でお世話になり、次の2冊の本は、同社が版元。


現代俳人文庫5 夏石番矢句集』、砂子屋書房、1995
並製本、ビニールカバー付き。
第1句集『猟常記』(全編収録)から第6句集『楽浪』までの俳句を抄録。吉本隆明との対談「俳句表現のアポリア」収録。


『ブラックカード』、砂子屋書房、2012
倉本修装丁、上製本、布装、カバー、帯付き。
「耐えがたいほど重たいカード」(著者「あとがき」)としての「ブラックカード」を象徴として編まれた第14句集。東日本大震災、福島原発爆発、両親の死などが基軸にある。「父の目は祖父の目その奥のさざなみ」「まがまがしい夕日を追って逃げ出す家族」「すべてをなめる波の巨大な舌に愛なし」など収録。メデジン、イスラエル、ウエリントン、ジェノヴァ、マケドニアなどの旅のインスピレーションから生まれた俳句も収録。

詩人としての田村雅之さんは、私小説的な作風に、古代から近代への視座をちりばめた詩を書き続けているが、近作には俳句的な切れのよさが濃厚になってきた。

70代に入られてますます快活に仕事を推進されている田村雅之さんをことほいでおきたい。

  東西南北集めて砂粒は丘に  夏石番矢  

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