この年末年始、ユダヤ人についての本を読み、旧約聖書を拾い読みしている。
ダニエル書は、コンパクトで魅力的な一書。
とくに第5章が興味深い。
紀元前539年、滅亡前夜のバビロニア王国首都バビロンの王宮での酒宴さなかの出来事。
人の手の指が現れて、ともし火に照らされている王宮の白い壁に文字を書き始めた(新共同訳)。
誰も読みも解釈もできなかったこの文字を、バビロニアに降伏したエルサレムから連れて来られて、育てられたダニエルが解読する。
メネ、メネ、テケル、ウ・パルシン
と書いてあった。ヘブライ文字で、しかも変形したヘブライ文字で書かれていたからダニエル以外には読めなかったのだろう。
「ウ」は「そして」を意味する。その他は貨幣の単位らしい(W・S・ダウナー 高柳富夫訳『現代聖書注解 ダニエル書』、日本基督教団出版局、1987年)。
そしてこれを聡明なダニエルは、語呂合わせとして見事に解読する。
数えられ、数えられ、量られ、そして分割される
「バビロニアの王、ベルシャツァルは、その治世の日々を神によって数えられ、数えられ、量られて足りないことがわかり、王国は分裂する」ことを意味する。
最後の「パルシン」には、分裂して勃興するペルシャまでが暗示されている。
この謎めいた神のことばは、俳句に近い。
メネメネ/テケル/ウ・パルシン
数えられ数えられ/量られ/そして分割される
俳句は5・7・5という音数よりも、3句節構造が最大の基本で、言語や文化や時代を超える力を持つことの一例である。
バビロンの白壁の俳句君だけが読み解く 夏石番矢
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