俳句雑誌「薔薇」第5巻第4号(通巻36冊)をネットの古本屋経由で入手。1冊で2万円弱の高値。
紙がかなり劣化しているが、貴重な歴史的資料。
昭和31年4月1日発行(月刊)
表紙 早川利康
編集兼発行人 富澤赤黄男
発行所 薔薇の会
東京都武蔵野市吉祥寺186 富澤方
総ページ数 52ページ
定価 60円
表4の「あとがき」は、高柳重信。
この号は、前号に続いての三橋鷹女特集。
この号の「作品Ⅰ」に、三橋鷹女は次の句などを発表。
とかげ瑠璃いろ長巻く日本の帯銀無地
短歌のページも設け、京武久美「ノアの方舟」掲載。当時20歳。寺山修司の友人でライバル。のちに俳誌「海程」同人。
哄笑が黄色に重なりゆく巷少年掏摸は霊柩車を越す
ざっと目を通して、「作品Ⅱ」の高柳重信の四行俳句「罪囚植民地」が、しっかり書けている。
なまぐさき
眠りの
蛇を
雪降りつつみ
「作品Ⅰ」巻頭の富澤赤黄男の俳句「黙示30」は、中途半端なモダニズム。抽象思考がそれほどできず、案外情緒的。
唖蝉はつひに唖 神のみはよみがえれども
僭越ながら、こう書き直してみた。
神々森に復活すれども唖蝉は唖
赤尾兜子も書き方が弱くて鈍い。
家鴨に散る 嵐を溜めた風船たち
面白い着想ながら、出だしが推敲の余地がある。僭越ながら、夏石番矢ならこうする。
私へ落ちる嵐を詰めた黒い風船 夏石番矢
躁鬱病の赤尾の「鬱」を詠んだ一句になった。
また、こうも改変できる。
ひよこへ落ちる嵐を詰めた黒い風船 夏石番矢
後年、赤尾兜子は「伝統帰り」するが、この俳人の書き方は助詞がおかしかったり、詰めが甘かったりで、書く技術の修練不足。
戦前の新興俳句、戦後の前衛俳句の失敗は、抽象思考能力不足、短詩を書く構築力不足が原因だということが、こういう雑誌を入手して確認できた。
曖昧に有季定型に癒着している。そこから自立した作句ができない。
吉本隆明から「中途半端な前衛」と呼ばれた金子兜太も、その範疇に入る。
参照
「太陽系」第20号入手
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201809article_35.html
「俳句評論」第3号など入手
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201809article_30.html
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