「俳句評論」第3号~第19号入手。第8号、第10号は欠号。
第3号
昭和33年7月1日発行
定価60円
編集兼発行人 高柳重信
発行所 東京都渋谷区代々木上原1289
俳句評論発行所
表紙カット 難波田龍起
ざっと読んで、高柳重信の特別作品「蒙塵」5句が突出している。
中洲にて
叢蘆そよぎ
そよぎの闇の
残り香そよぎ
この1句の4行冒頭は、「中」「叢」「そ」「残」、つまりのちの内縁の妻で、住居を発行所に提供した中村苑子。彼女への暗号化されたラブレターか?
三谷昭は、「鳩」5句に代表作が含まれる。
鳩墜ちて正方形の石並ぶ
永田耕衣の「諸君」5句は、下手な前衛俳句。
デパートでビール飲む鼠のような僕
これなどは、まだ素朴さとユーモアがある。
重信の当時の妻で、高柳蕗子の母、高柳篤子は、奇怪な無題の俳句5句を発表。
猫の尻毛は 鉛筆けずり 野原でまわせ 野原でまわせ
おもしろい俳句だが、狂気に近いものがうかがえる。彼女は重信と離婚し、渡米して亡くなったとか。
俳句雑誌発表作で、後世に残る句は、1パーセントもないのが、「俳句評論」という新興俳句系のエリート集団の雑誌にもあてはまるが、貴重な資料。古本値段も安くなかった。
こう書いて、屋根裏部屋の資料を点検したところ、「俳句評論」創刊号から第30号あたりまでは、揃いで保存してあった。中村苑子さんから譲与されていた。これを忘れていた。
このころの俳句は熱気があった。日本も熱気があった。
しかし、ほんとうの見識を持った人はほとんどいなかった。
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