新宿2丁目夢の跡

2018年9月6日(木)、新宿三丁目での午後6時の待ち合わせの前に、一時間半ほど新宿二丁目付近を歩く。

このあたりを歩くのは、2010年以来8年ぶり。

かつては、ゲイの歌人、当時朝日新聞社社員だった石井辰彦とよく、ゲイバー「クロノス」へ飲みに行った。マスターというか、ママというか、黒ちゃんが経営するお店。ヴェルレーヌ、チャイコフスキーなどの、世界のゲイもしくは、バイの著名文化人の写真が飾ってあった。

黒ちゃんが亡くなり、いまは店は空き家状態。それでもビルの外に看板が残っていたので、撮影する。

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この店で、中上健次と飲んだこともある。

この店を詠んだわが一句。

  黒の巣に小指を立てて年をとる  夏石番矢

  句集『楽浪』(書肆山田、1992年)

そう、黒ちゃんは苗字が、黒沢、黒田だったか、名前が「としお」だった。それだから「年をとる」。自分を「せんずりおかま」と呼んでいた。

美空ひばり、三島由紀夫、赤木圭一郎なども知り合いだった。

私がここで、かまととぶっていたイギリス帰りの若い男に怒ったことがある。しょげた売り専ボーイを、黒ちゃんが励ましているのを目撃したこともある。この店には、長谷川櫂も来たことがあるらしく、私が彼を批判しても黒ちゃんは決してけなさなかった。

この店の命名者は、高橋睦郎。ここで出会ったことはない。

クロノスが入っていたビルは、いまは空き部屋が多い。時間の経過は、無情に進行する。

  新宿二丁目野良の黒猫にしらが  夏石番矢

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