ほんとうにひさしぶりで、芯のある句集、徳弘純全句集『城』(編集工房ノア、2018年7月、本体価格3500円)に出会う。鈴木六林男(すずき・むりお)門下。
徳弘純さんはもう亡くなったと昨秋、神戸で聞いたのだが、ご健在でなにより。徳弘さんとは、1980年代に鈴木六林男さんとご一緒で、ときどき大阪でお会いした。夜を徹してお酒をつきあった。1943年高知生まれ。当時、銀行員だったと記憶する。羽曳野市在住。
第一句集『非某』(1981年)から第六句集『シーラカンスの夢の中へ』まで収録。
『非望』には、次のような秀句が並ぶ。
水を飲むアメリカ人の影のなか
火の拳そらの子宮に霙ふり
萍は犇き昼の酒匂う
夜の旗われのうちなるわれら見ゆ
虹の下オルガンの黒運び来る
巻末の『シーラカンスの夢の中へ』では、このような秀句がある。
使者として発つ一月の闇の中
ひとりみのいつもどこかにいなびかり
蛆として慈悲の西日のただなかに
南(みんなみ)へシーラカンスの夢の中へ
この出版を機に俳句創作をやめられるのではないかと危惧を抱く。
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