3月末の関西行きの主目的は、下記シンポジウムに招待されたため。
国際シンポジウム「アラブ地域の文学作品における個人と世界」
日時 2018年3月24(土)、25日(日)
会場 国立民族学博物館
Ⅰ.趣旨
本シンポジウムは人間文化研究機構が進める現代中東地域研究推進事業の国立民族学博物館現代中東地域研究拠点によって実施されます。同事業の中心研究テーマ「地球規模の変動下における中東の人間と文化―多元的価値共創社会をめざして」に沿って、シンポジウムでは、アラブ地域の文学作品、主に詩において、個人と世界、個人的空間と公的空間の関係がどのように位置づけられ、形作られてきたのかを追求します。文学作品はアラブ社会と共同体の形成および変形において、きわめて重要な文化資源・特質となってきました。とりわけアラブ詩は、アラブ地域の社会規範や構造の根幹をなす上で重要な役割をはたしてきたといえます。このようなアラブ地域の文学を通して、個人と世界との関わりや個人的空間と公的空間の交差によって生じる調和と対立を明らかにし、多元的価値を見いだす新しい手法や観点を提示できる場にしたいと考えています。
Ⅱ.プログラム予定
2018年3月24日(土)
13:00-13:10 開会の辞 西尾哲夫 国立民族学博物館副館長
13:10-13:30 シンポジウムの趣旨 鷲見朗子 京都ノートルダム女子大学人間文化学部長
13:30-14:30 基調講演 ヤロスロヴ・ステケヴィチ シカゴ大学名誉教授
「エジプト知識人ユースフ・ザイダーンの作品における個人的・公的空間」
[第1セッション] 詩、政治、戦争 (司会 ハサン・イッズッディーン)
14:30-15:00 スザンヌ・ステケヴィチ ジョージタウン大学教授
「古典と近代アラブ詩における私的・政治的インターフェイス」
スケテヴィッチ氏は、ウクライナ生まれのアラブ文学に造型深い碩学。このシンポの主賓。ひさしぶりで、すぐれた文学研究者に出会う。ご夫人のスザンヌ・ステケヴィチ女史もアラブ文学研究者。
スケテヴィッチ夫妻
15:00-15:30 鷲見朗子 京都ノートルダム女子大学教授
「エジプトの詩人ハーフィズ・イブラーヒームと日本の歌人与謝野晶子の詩における戦争と死」
15:30-16:00 質疑応答
16:00-16:30 休憩
[第2セッション] 詩におけるビジョンと集合体(司会 鷲見朗子)
16:30-17:00 鵜戸聡 鹿児島大学准教授
「屍体たちと祖国 : カテブ・ヤシンにおける集合性の詩学」
17:00-17:30 夏石番矢 明治大学教授・世界俳句協会理事長
「チュニジアとモロッコによって破壊され再創造された俳句ビジョン」
17:30-18:00質疑応答
左から西尾哲夫氏、夏石番矢
2018年3月25日(日)
[第3セッション] 詩における自己と社会(司会 スザンヌ・ステケヴィチ)
9:30-10:00 ムハンマド・アッシャリーフ サウジアラビア北国境大学助教授
「ヒジュラ暦12世紀(西暦18世紀)のイフワーニイヤート詩―ムハンマド・アッサマルジー(ヒジュラ暦1181年没)の例」
10:00-10:30 西尾哲夫 国立民族学博物館教授
「19世紀初頭民衆版アラビアンナイト異本の中の詩の役割と人物造形―中東世界における「近代」と「自我」の関係性再考の試み」
10:30-11:00 ハサン・イッズッディーン サウジアラビア北国境大学教授
「現代アラブ詩におけるコーヒーとコーヒーハウスのディスコース」
11:00-11:45質疑応答
昼食休憩
[第4セッション] ウンム・クルスームの歌における詩(司会 西尾哲夫)
13:30-14:00水野信男 兵庫教育大学名誉教授
「ウンマのなかの詩―ウンム・クルスームのレパートリーにみる」
14:00-14:30 フダ・ファフルッディーン ペンシルバニア大学助教授
「ウンム・クルスームのカスィーダ―革命を起こす個人的な試練」
14:30-15:00質疑応答
15:00-15:30休憩
15:30-16:15 全体総括 スザンヌ・ステケヴィチ ジョージタウン大学教授
16:15-17:15 パネル討論 ヤロスロヴ・ステケヴィチ、ハサン・イッズッディーン、夏石番矢
左からハサン・イッズッディーン氏、ヤロスロヴ・ステケヴィチ氏、夏石番矢
17:15-17:30 閉会の辞 西尾哲夫 国立民族学博物館副館長
それほど疲れずに、前日程を終えた。
シンポ完了後、記念撮影
幹事役の鷲見朗子さんも熱心にまじめに会を運営。若い研究者鵜戸聡氏も育っている。
夏石の講演原稿(日英版)は、「吟遊」第78号に掲載。私のスピーチ中のアラビア語部分を読んでくれたハサン・イッズッディーン 氏は、アラビア語詩研究の真摯な熱血漢。私のスピーチを、「詩のようだ」とほめてくれた。
スザンヌ・ステケヴィチ 女史は、私のスピーチの感想として、
「俳句は日本的制約を超えて、世界の美に反応できる。」
と述べてくれる。とてもうれしいコメントだった。
参照
日英版「チュニジアとモロッコで破壊され再創造された俳句ビジョン」
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201803article_19.html
英文講演原稿ほぼ書き終える
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201803article_8.html
英文講演原稿を書き始める
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201803article_7.html
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