ぶりかえした風邪の寝床で、永井荷風の『濹東奇譚』を読む。これまで何度も読もうとして、投げ出してしまった小説。
アメリカとフランス在住体験のある荷風は、日本の近代を偽物として苦々しく受け取っただろう。
新聞を読まないとか、ラジオがうるさいとか、日本のメディアの虚偽性を、この小説の主人公に言わせている。
しかし、ごちゃごちゃした細かい描写が、濹東=玉の井の雰囲気を出しているかというと、そうでもない。
お雪という娼婦との交情も、悪くはないが、浅い。日本の近代小説はこの程度のものなのだろうか?
黴臭い二階で交わる雪の妖精 夏石番矢
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