田村雅之詩集『碓氷』(2016年6月11日、砂子屋書房、本体価格2500円)届く。
細やかな気配りのデザイン。
集中の一篇「寒蛩」(かんきょう)
というタイトルを漢和辞典で調べると、秋の末に鳴く蟋蟀のこと。
こおろぎ、もしくは蟋蟀と書いては生まれない詩境が醸し出されているが、この死語を詩語として用いるところに、この詩人の現在があるのだろう。
2016年3月の横超忌の二次会で、この詩人に母方の実家かつ生家(高崎の小暮家)の写真を見せてもらったが、この詩集収録の「碓氷へ」「既往症」などに登場する。
巻頭詩「鼎の石――吉本隆明」
には、沖縄の御嶽(うたき)に置いてある三つ石を模して、吉本家の出自の地、天草の石が三つ、本駒込の吉本家の吉本隆明遺影の前に置いてあるとうたう。
「龍井地下牢」の末尾、
耿々とした文明の
知らず知らずの
刻の中
わたしもまた一人の
加害者なのだ
は、戦後左翼的自虐史観とも、むろんネトウヨ的な腐ったナショナリズムとも違う、人間の宿業を呟く。
石三つ黄泉に運んで消えゆかん
生家から氷は見えず風見える 夏石番矢
参照
第4回横超忌 吉本隆明を偲ぶ会1
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201603article_14.html
第4回横超忌アルバムと吉本隆明を偲ぶ会
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201603article_21.html
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