『千一夜物語』を読む6 3人の王子誕生の意外と総論

岩波文庫版『完訳 千一夜物語 13』を読み終え、これでこの版は読了。4月中旬から読み始め、約1か月かかった。

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「千一夜」と題されながら、話の語り手、シャハラザードが双子の男児の出産に苦しんでいた第六百七十九夜から第七百夜の二十二夜は欠けていたと、最後の「大団円」でわかる。つまり、千一夜-二十二夜=九百七十九夜の物語。これは岩波文庫版の元になったJ・C・マルドリュス博士によるフランス語テキストの構成だろうか。確認していない。

しかも、最初の出産時は、第二百七十夜から第二百八十四夜の「『博学のタワッドド』の物語」(『完訳 千一夜物語 5』)にあたり、お産が軽く、支障なく夜伽を展開したと種明かしされる。この物語が語られる約3年間に、シャハラザードは3人の男児を生んでいる。

あまりに多くの物語が語られ、そのすべては覚えていられない。

砂漠の地に生まれた説話らしく、昼と夜のコントラスト、荒地と大宮殿のコントラスト。貧乏と富裕のコントラスト。愛と憎悪のコントラスト。賢者と愚者のコントラスト。美男美女と醜悪な男女とのコントラストなど、さまざまな要素におけるコントラストが鮮烈な物語。

記憶に残ったのは、比喩を使った美男美女の美しさの表現の執拗さ。そして、美男美女の性行為の描写の比喩表現のユーモラスな繰り返し。これは、マルドリュス博士による加筆によるものかもしれないが、日本の『源氏物語』の性行為描写の意図的脱落と比べると、対照的。

『源氏物語』は半分までしか読めなかったが、『千一夜物語』は無理なく読破できた。それぞれの話の結末を知りたくなり、読み続けさせる気にさせる。

前者の閉鎖性と後者の開放性。
前者の無常感と後者の楽天性。
前者の美意識は多様な和紙、後者は巨大なダイヤモンドで象徴される。

こういう対比もおもしろい。

  いつできるダイヤモンドと和紙の歌  夏石番矢
  

参照
『千一夜物語』を読む5 アラジンとロク鳥
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201605article_18.html

『千一夜物語』を読む4 キリスト教徒への敵意
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201605article_16.html

『千一夜物語』を読む3 羽衣伝説
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201605article_9.html

『千一夜物語』を読む2
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201604article_20.html

『千一夜物語』を読む1
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201604article_17.html

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