長崎の史跡料亭「花月」のM・Yさんから、向井去来の句の真贋の問い合わせがあった。「花月」所蔵の軸に揮毫されたもの。
野辺うららわれも霞の中ならめ 去来
と書いてある。
狩野常信の署名もそれらしい。しかし、なぜこの俳句に、馬の絵が添えられているのだろうか? これが謎というより、あやしい。また、馬の絵が下手だ。馬の目は死んでいる。
常信の真筆の署名落款
「野辺うらら」の俳句、私の手持ち資料には出てこないので、俳文学者の復本一郎先生にお尋ねしたら、次のようなお返事が届く。
常信と去来は、時代的には合うのだが、二人の接点が不明。
結局、真贋はっきりしないのだが、私は去来の故郷長崎で作られた偽物という印象を持っているが、確証はない。
偽物だとしたら、たちの悪い偽物だ。
去来の句も、名句ではないが、そこそこ。常信は、署名が本物に似せてあるが、気品と勢いがない。落款は本物に近い。いずれも贋作作りの小賢しさを感じる。
ふり向いた荒馬の目はもう死んでいる
正月や野の句と馬の絵うたがわし 夏石番矢
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