特選第1位に、6月号でも同成績の新潟のTさんが入る。この人は、もっと独自色を色濃く出すと、俳句愛好家を超えた、立派な俳人になれる。現在の俳号は、宮沢賢治の童話の主人公の狐の名前。
佳作120句は、1月号にくらべると、かなり高レベルになる。
投句者が60人ほど増えたようだ。他誌が部数減のなか健闘。
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「俳句界」2015年6月号 雑詠選評 夏石番矢選
遠火事の音と映画のやうな雨
新潟 とっこべとら子
○他の投句「きさらぎのナイフ刺されて目覚めけり」を含め、それなりの力量の持ち主。「音」と「雨」の並列だけで一句を構成したところがいい。老いの愚痴を書き流した投句の氾濫のなか際立つ。「映画のやうな雨」はモノクロの雨だろうか。この一句は茫漠とした不安を詠んでいる。
春塵の街新しき肩ばかり
大分 金澤諒和
○この一句では「肩」ということばがとても突出し、生きている。選者は春埃が顕著なモルゴルから帰国したところ。「肩」は、人や事物すべての肩。新しいすべての「肩」に「塵」が降る。「塵」をかぶりながらも、あらゆる「肩」は生き生きとして、「街」の光景にアクセントを付ける。
蘖る千の影から千の光
神奈川 大木雪香
注 蘖る=ひこばえる
○この世の「影」と「光」の表裏一体、あるいは交代を的確に端正に表現した秀句。樹木の「蘖」とは、そういう劇的事実が起きるしるし。「千の光」が生まれるためには、「千の影」が必要なのだろう。作者の信念もこめられている。
参照
連休中に「投稿 俳句界」7月号選句完了
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201505article_9.html
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