夏石番矢句集一覧

夏石番矢の日本での句集リスト。一部アンソロジーは省略。転載自由。

高柳重信編『昭和俳句選集』、永田書房、1977、共著
昭和5年から昭和51年までのモダニズム詩である新興俳句の編年体のアンソロジー。
夏石の俳句は、昭和45年、46年、49年、50年、51年に掲載。
画像


画像



『猟常記』、静地社、1983

画像


高麗隆彦装丁。上製本、布装、箱と帯付き。
十代から二十代後半までの245句収録(著者「後書」)、高柳重信の「『俳句』への道」などの栞文が付く処女句集。漢字は精興社の正字体を使用。夏石の東京大学大学院生時代の出版。

この句集には初版発行年と同年の著者装丁による新装版がある。

新装版
コラージュは著者自身によるもの 
箱なし、ビニールカバー、帯付き
画像


収録俳句に「卍なす大空なれば玉遊び」「家ぬちを濡羽の燕暴れけり」「青空を吸ひ込み蝉の穴は消ゆ」など。高柳重信は「家ぬちを」の句を生前ほめた。

この句集ですでに、五・七・五音だけではないリズムの俳句を示している。たとえば、「穂波の底にて沖と酒とを忘れけり」は八・七・五音。

吉岡実がこの句集を激賞した。

30年前の吉岡実のはがき
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201305article_6.html

この句集は、古書価格約20万円だったことがある。

参照 夏石番矢「処女句集による予告」(『俳句縦横無尽』、沖積舎、2010年、pp. 17-21)
高知新聞に「俳句 縦横無尽48 処女句集による予告」
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200910article_19.html


『メトロポリティック』、 (精鋭句集シリーズ6) 、牧羊社、1985

画像


第2句集。
並製本。カバー、吉岡実による帯文が付く。
166句収録。代表作「未来より滝を吹き割る風来たる」「千年の留守に瀑布を掛けておく」「花々のビブラート 火の鳥が火を脱ぐ島」など。『猟常記』からの脱皮を図ろうと、西洋詩的な書き方を模索していた。

この句集のカバーに、高柳重信の顔が隠されている。


『真空律』、思潮社、1986
上製本。カバーは新檀紙使用。帯付き。
昭和天皇などの近代天皇の発した漢文読み下し文を元にしたパロディー作品集。書きおろし詩論「〇.五人称の詩学」収録。この句集は、思潮社社長小田久郎とのやりとりから生まれた。収録句に関しては、十分な論考がない。

画像


三輪薫「夏石番矢句集『真空律』に見る二・ニ六事件
http://www.geocities.jp/ginyu_haiku/criticism/sinkuuritsu.pdf

朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=80oXXntldvU



『神々のフーガ』、弘栄堂書店、1990
並製本。カバー、帯付き。
宇宙創成から古代天皇成立までを詠んだ句集。並製本。古代朝鮮と日本の関係も詠み込まれている。「月は日を我は汝を追う風の国」「神々のあくびが桜を枯らすのか」「瑠璃王の東西南北みずけむり」など収録。弘栄堂書店の大井恒行の尽力から生まれた句集。

画像


この句集の一部の俳句については、野間秀樹編『韓国・朝鮮の知を読む』(クオン、2014年)、韓国版한국의 지를 읽다, 위즈덤하우스 (Wisdom House, Korea, 2014, co-authored)収録の夏石番矢「海をまたぐインスピレーション」が、古代日韓関連俳句に焦点をあてて解説を加えている。

羽田野令「夏石番矢句集『神々のフーガ』を読む」
http://www.geocities.jp/ginyu_haiku/criticism/fugahatano.pdf

朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=80oXXntldvU


『人体オペラ』、書肆山田、1990
上製本、箱、帯付き。
「『人間』という幻想を突き破るために、人体パーツと西洋音楽を基軸に、想像力の深夜パーティーを試みた」(著者「あとがき」)。収録句に「すなあらし私の頭は無数の斜面」「深夜の水に誰か関節を与えよ」など。この句集の収録句は、最初は漢字と片仮名で作られていた。小さい病気を繰り返していた時期の作。「天高くシンフォニー的身体ひとつ」「舌の上に寺院あらわれアレグロ」などクラシック音楽への耽溺も反映している。

画像


朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=8Ct9iafMNYc


『楽浪』、書肆山田、1992
上製本、カバー、帯付き。
221句収録。「熊野詣でを機に、旅の面白さに魅せられ、さまざまな地霊に触発されて、三十代後半に」(著者「あとがき」)まとめた句集。「地の果ての光の網よみどりごよ」「「みなかみに声の列柱あり薄暮」など。中上健次の主催する熊野大学での活動が、この句集を生んだ。1992年8月に急逝した中上への追悼句「大瀑布象の夢見て逝きし人」「夏の浪中上健次大むくろ」などのほか、韓国や出雲を詠んだ俳句も収録。

画像



『巨石巨木学』、書肆山田、1995
上製本、カバー、帯付き。
日本の古代からの信仰対象であった「巨石」や「巨木」を詠んだ338句収録した、夏石の第7句集。漢字ばかりの俳句は漢訳仏典のパロディー。四方田犬彦、石井辰彦と発行していた雑誌「三蔵」発表作が多い。

画像


吉本隆明『詩の力』(新潮文庫、2009年)の「夏石番矢」(pp. 53-55)に、漢字ばかりで作られた収録俳句3句の読解がある。


『現代俳人文庫5 夏石番矢句集』、砂子屋書房、1995
並製本、ビニールカバー付き。
第1句集『猟常記』(全編収録)から第6句集『楽浪』までの俳句を抄録。吉本隆明との対談「俳句表現のアポリア」収録。

画像



『地球巡礼』、立風書房、1998
上製本、カバー、帯付き。カバーは著者が撮影したフランス・ブルターニュの教会の夕景。
バリ、チュニジア、中国、トルコ、イタリア、ニューヨーク、パリ、南仏、コルシカ、英仏海峡、ブルターニュを詠んだ467句収録の第8句集。「『海外詠』ではなく『地球詠』」(著者「あとがき」)を目指す。収録句に「肺で知る沙の地上と瑠璃のそら」「天へほほえみかける岩より大陸始まる」「日曜のミラボー橋を羽毛飛ぶ」など。
1996年~1998年、明治大学からパリ第7大学へ派遣の在外研究中に、大きく世界観が変わった。

鈴木伸一「世界俳句としての品格―句集『地球巡礼』を読む」
http://www.geocities.jp/ginyu_haiku/criticism/chikyujunrei.htm

画像


この句集には、句数や構成の異なる

スロヴェニア版
Romanje po Zemlji (Društvo Apokalipsa, Slovenia, 2000)
http://www.worldcat.org/title/romanje-po-zemlji/oclc/443668081

イタリア版
Pellegrinaggio terrestre / Earth Pilgrimage / 地球巡礼 (alba libri, Italy, 2007.)
http://www.ibs.it/code/9788889618523/natsuishi-ban-ya/pellegrinaggio-terrestre-ediz.html

がある。海外版には、日本版になかった日本を詠んだ句を収録。


『未来の滝―33句』、鶴瀬出版、1998
パリでの在外研究を終えて帰国後出版。第1句集『猟常記』から第8句集『地球巡礼』までの俳句から選ばれた33句の日仏対訳句集。これが夏石の海外句集出版の基礎となる。稀覯本。

画像



『未来の滝―55句』、吟遊社、1998
第1句集『猟常記』から第8句集『地球巡礼』までの俳句から選ばれた55句の日英対訳句集。稀覯本。

画像



『夏石番矢全句集 越境紀行』(初期句集『うなる川』、未刊句集『漂流』収録)、沖積舎、2001
上製本、布装、箱、帯付き。
既刊8句集に、初期句集『うなる川』と未刊句集『漂流』を含め10句集、合計2465句収録。栞文に飯島耕一、小笠原賢一、四方田犬彦寄稿。

『うなる川』は「足とめて見るは梅雨のうなる川」「深海魚のごとくに冬の空見上ぐ」「緑蔭に男は優しき潜水艦」など収録。

『漂流』は「南島で何度も濃い夢さずかりぬ」「イリノイの菫へ越境してくる光」など収録。1年半のパリ生活から帰国して、日本の根深い鎖国への失望感がテーマ。それに、パリ生活以前の日本国内の地誌俳句を併せている。
参照
鎌倉佐弓の生家と鎌倉家の墓 平家落人
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201506article_22.html

画像



『右目の白夜』、沖積舎、2006
上製本、カバー、帯付き。清水国治装丁。
232句収録。「混乱と幻滅のその先を詠んだ句集」「(眼病の)闘病句集としても読める」(著者「あとがき」)。第11句集。夏石は9・11を滞在中のスロヴェニアの首都で知る。その9・11や自身の白内障による混乱が基調。そのなかから次の段階への暗示がある。「目を病めば金魚のように歩いている」「月を追う国境から山上教会へ」「日本人みんな漂いみんな幽霊」「黄金の鼠で終わる夢十夜」など収録。

画像


この句集の書評を、小谷野敦に依頼し承諾を得たが、結局、小谷野に書く能力がなく、実現しなかった。

米国での抄訳版日英対訳句集『Right Eye in Twilight』(Wasteland Press, USA, 2006)がある。

『連句 虚空を貫き』(カジミーロ・ド・ブリトーとの共著)、七月堂、2007
並製本、カバー、帯なし。
日英仏葡の4言語連句集。100句を発句だけで編んだもの。奇数俳句がポルトガルのド・ブリトー作、偶数俳句が夏石作。両者のメールのやりとりから生まれた連句集。

画像


朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=64GmV5yFttk&feature=youtu.be


『空飛ぶ法王 161俳句』、こおろ社発行 東京堂出版発売、2008
小迫俊一装丁、並製本、カバー、帯付き。
すべて「空飛ぶ法王」を詠み込んだ161句を日英対訳で収録し、清水国治によるイラストも挿入。
画像


朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=Jdii5LFqezE
https://www.youtube.com/watch?v=GAYgixXXAA4

この第12句集には、インド、イタリア、モロッコで出版された姉妹篇がある。出版の順序は、インド、日本、イタリア、モロッコ。

Flying Pope: 127 Haiku/空飛ぶ法王 127俳句, Cyberwit.net, India, 2008.
http://www.cyberwit.net/authors/banya-natsuishi

Il Papa che vola: 44 haiku / 空飛ぶ法王 44俳句, Rupe Mutevole, Italy, 2010.
http://www.amazon.it/Il-papa-che-vola-giapponese/dp/8865910305

البابا الطّائرُ في السَّماء/Flying Pope, Agence de l'ORIENTAL, Oujda, Morocco, 2016.
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201608article_11.html


『迷路のヴィルニュス』、七月堂、2009
並製本。カバー、帯なし。
国内での第13句集で、日本語、英語、リトアニア語の3言語36句収録。文庫本サイズ。「最初の章は、バルト諸国の全体的印象」「第二章は、二度訪れたリトアニアについて」「第三章は、至福感に満ちたエストニアの森を讃美」(著者「序文」)。「木の太陽木の鳥木の手木の心臓」「迷路のヴィルニュス熟した林檎が暗号」「夜のヴィルニュス私は琥珀のなかの蜂」など収録。

2009年10月開催の第20回ドルスキニンカイ詩の秋と第5回世界俳句協会大会のため、出版。

画像


朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=iKs_wpJwKyY


日本版のない句集
ハイブリッド天国 / Hybrid Paradise
(English translations by Ban'ya Natsuishi & Jim Kacian, Cyberwit.net, India, 2010)
ほぼ全句このブログ掲載の俳句を日英対訳で収録した。日常詠句集ながら、哲学的抽象的要素が強い。

「時間を生み出す南は虚空雲は歌」「命は三拍子で砂の斜面を駆け上がる」など収録。

https://banyaarchives.seesaa.net/article/201007article_2.html

朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=_KCN5zwly-4


『ブラックカード』、砂子屋書房、2012
倉本修装丁、上製本、布装、カバー、帯付き。
「耐えがたいほど重たいカード」(著者「あとがき」)としての「ブラックカード」を象徴として編まれた第14句集。東日本大震災、福島原発爆発、両親の死などが基軸にある。「父の目は祖父の目その奥のさざなみ」「まがまがしい夕日を追って逃げ出す家族」「すべてをなめる波の巨大な舌に愛なし」など収録。

メデジン、イスラエル、ウエリントン、ジェノヴァ、マケドニアなどの旅のインスピレーションから生まれた俳句も収録。

画像


インドでの日英西3言語版(ブラックカード / Black Card / Tarjeta negra, Cyberwit.net, India, 2013)がある。構成が日本版と異なる。清水国治によるカバー。
http://www.cyberwit.net/publications/554


『わがモンゴル』、吟遊社、2015

画像


モンゴルを詠んだ10句を日英蒙3言語で収録したパンフレット句集。第15句集。非売品。「鼠は穴で青い夢見る大草原」「馬頭琴は圧縮銀河みんな瞑目」など収録。

https://banyaarchives.seesaa.net/article/201503article_23.html

2015年3月末のモンゴル俳句協会創立大会で配布された。


『夏石番矢自選百句』、沖積舎、2015

画像


上製本、、カバー、帯付き。カバーの題字は著者自身の揮毫。
1970年作の「足とめて見るは梅雨のうなる川」から句集『ブラックカード』(2012年)収録の2011年作「Todosは熱い波詩人は太陽」までの100句を作者自身が墨書した色紙を縮小複製した句集。100句の出典と英語版付き。鎌倉佐弓解説。

2015年5月19日~28日、東京・神田神保町OKIギャラリー開催の夏石番矢自選百句色紙展で、収録色紙100点と軸装2点が展示販売された。
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201505article_16.html

コメント 鎌倉佐弓
https://www.youtube.com/watch?v=ZgG90VYiW8s&feature=youtu.be
朗読ビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=h0ofPuHfT20&feature=youtu.be


夏石番矢+清水国治 俳画集、SHIMAUMA PRINT、2015

画像


夏石番矢の俳句29句を清水国治がデジタル俳画化した29点のフルカラー印刷。
「未来より滝を吹き割る風来たる」「大きなしずかなてのひら九十三年を宿す」など。
http://seehaikuhere.jimdo.com/


沖縄詩歌集~琉球・奄美の風~(共著)、コールサック社、2018年
画像

https://www.amazon.co.jp/沖縄詩歌集-琉球・奄美の風-鈴木-比佐雄/dp/4864353468
http://www.coal-sack.com/syosekis/view/2309/アンソロジー『沖縄詩歌集%EF%BD%9E琉球・奄美の風%EF%BD%9E』
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-785219.html
夏石番矢の沖縄関連俳句20句を、句集『巨石巨木学』(書誌山田、1995年)より抄録。


『東北詩歌集-西行・芭蕉・賢治から現在まで』、コールサック社 2019年、共著
画像

https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E8%A9%A9%E6%AD%8C%E9%9B%86%E2%80%95%E8%A5%BF%E8%A1%8C%E3%83%BB%E8%8A%AD%E8%95%89%E3%83%BB%E8%B3%A2%E6%B2%BB%E3%81%8B%E3%82%89%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%81%BE%E3%81%A7-%E9%88%B4%E6%9C%A8-%E6%AF%94%E4%BD%90%E9%9B%84/dp/4864353832/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1552012274&sr=1-1&keywords=%E6%9D%B1%E5%8C%97%E8%A9%A9%E6%AD%8C%E9%9B%86

夏石番矢が東北を詠んだ20句を、既刊句集『真空律』『神々のフーガ』『楽浪』『巨石巨木学』『漂流』『ブラックカード』より抜粋掲載。


海外出版一覧は下記記事
List of Ban'ya Natsuishi's Overseas Publication 1
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201404article_13.html

List of Ban'ya Natsuishi's Overseas Publication 2
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201902article_25.html

この記事へのコメント

  • 花田

    『現代俳人文庫5 夏石番矢句集』を日本の古本屋で注文しました。
    2015年05月27日 10:12
  • Fujimi

    ありがとうございます。著者には一銭も入りませんが……
    2015年05月27日 20:17
  • Fujimi

    まだこの記事不十分なので、増補してゆきます。
    2015年05月28日 08:49
  • Fujimi

    少し増補しました。
    2019年03月31日 15:15

この記事へのトラックバック

Ban'ya Natsuishi's Overseas Publication List 3rd
Excerpt: 海外での出版一覧をここに更新して、記事にしておきたい。
Weblog: Ban'ya
Tracked: 2015-05-26 05:45

「未来より」俳句 初出
Excerpt: 私の俳句、
Weblog: Ban'ya
Tracked: 2017-04-19 09:02

教育出版へ自作俳句掲載許可
Excerpt: 教育出版の平成3年度高校国語科用教科書に準拠する教師用指導書への、夏石番矢俳句2句、
Weblog: Ban'ya
Tracked: 2017-12-09 20:12

1981年東大大学院博士課程時代の写真
Excerpt: 1981年(昭和56年)4月1日発行の、東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進学したときの学生証。
Weblog: Ban'ya
Tracked: 2019-06-10 04:41