「俳句界」(文學の森)5月号の雑詠の選句と選評をすませる。3月23日からのモンゴル行きに備えて、早く終えた。
今回は、特選に選びたい俳句が4句あった。
特選に残った3句は、いずれも東京都の作者。意図しない結果。また、これまでにない冒険作や無季の句も。
時代を深くとらえた句が2句。人間や自己については、まだ掘り下げが浅い。
全体に、老いの愚痴から抜け出した句が増えたような印象を持った。
「俳句界」本誌掲載の俳句より、別冊「投稿 俳句界」夏石番矢雑詠選の特選句のほうが、はるかにレベルが高いのではないだろうか?
写真は、この号から別冊になった「投稿 俳句界」2015年1月号表紙。
同号掲載の夏石番矢特選句3句の選評
ひきかぶる銀河の重さ夜の深さ 埼玉 成田淑美
○作者はそれほど意識せずに作った一句かもしれないが、単純で深く広い思いがこもっている。こういう句の「銀河」と「夜」は、神話的な根源性を持つ。ふだんは忘れている夜の宇宙を、「ひきかぶる」のが私たちの宿命。それに私たちは気づかず、目先の雑事に追われて生きている。
蜩の自由はこれを保証する 栃木 大渕久幸
○日本国憲法の「表現の自由」「学問の自由」などの条文をもじった諧謔精神と社会批評明確な秀句。「蜩」には、悲しい声で夕暮れに鳴く昆虫と其日暮らしの貧しい人々が重ねられた。「自由」が危うくなり、貧困が広がった現在の日本を、ユーモアたくみに表現している。
大いなる神の褌天の川 北海道 佐藤尚輔
○近年珍しい豪快な響きの一句。「天の川」を「神の褌」とためらいなく断定するのも潔い。夜空には「神の褌」、さらには見えない雄々しい生殖器も存在するのだろう。俳句雑誌に氾濫する些末で浅い自然詠を軽々と凌駕する快作。作者の住む北海道の自然の雄大さが作らせたのだろう。
参照
「俳句界」4月号雑詠選完了
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201502article_8.html
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