11月10日の、
平川祐弘先生八十路出版記念会
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201311article_12.html
の二次会で、東大大学院の後輩で、広島大学大学院教授の西原大輔さんが、私の代表作を知りたがるので、
未来より滝を吹き割る風来たる 夏石番矢
を紙に書いて教えたところ、
「出産」のイメージがありますねと言ってくれた。
これは、作者として望外のうれしい解釈だった。
はじめての勤務先シンガポール大学を、率直な発言のため1年で首になった西原さんは、明瞭明快な話し方をする若い比較文学者。同じ後輩でも、小谷野敦のあのバイアスのかかった暗い語り口とは正反対。また、小谷野敦は俳句がまったく理解できない気の毒な日本人。
しかし、俳句の真髄を理解できない日本インテリは、小谷野敦に限らない。俳人と称している連中も俳句がわからない大変残念な状況。
滝割れて飛び出す極彩色の鳥 夏石番矢
この記事のアップ後、西原さんから、すくれた鑑賞文が届いた。簡潔で創造的な一文のすべてを追加掲載したい。
子供は未来からの使者であるというが、ほとんどの子供は、成長して平凡な大人になり、あるいは鼻持ちならない俗物となって、既存の秩序を維持するだけの凡庸な存在になり下ってしまう。ところが、ごくまれに、天才と呼ぶに値する人物が現れ、それまでの常識を覆し、清新な風となって、新しい未来を創り出してゆく。この句は、そんな風雲児の誕生を描いた句だろう。
嬰児は母親の体を二つに割って、胎内からこの世の中にやってくる。未来からの訪問者であるこの人物は、滝のような激しい精神を持ち、一陣の風となって、新しい時代を築いてゆく。作者はそのような天才が平成の時代に誕生することを夢見ているのである。それは同時に、えてして仲間うちの慣れあいに陥り、ありきたりの発想にとらわれやすい俳句の世界に生きる夏石番矢氏が、自らの創作の思いを述べたものでもあるだろう。激しい滝をも吹き割る気概で句作に邁進し、未来の新しい文学を作りだしてゆきたいという密かな志が、この一句には託されている。
西原大輔
参照
夏石番矢「未来の滝」についての記事一覧
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201001article_19.html
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夏石番矢「未来の滝」についての記事一覧
Excerpt: このところ、夏石番矢の自作俳句について、質問が寄せられているので、まずは「未来の滝」についての、このブログ内の記事一覧を下に作成した。
Weblog: Ban'ya
Tracked: 2013-11-13 20:17
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Fujimi