記紀神話にはなく、『出雲国風土記』意宇郡の条に、ヤツカミヅオミツノが、国引きをする神話がある。これは、出雲にあった独自の神話の断片だろう。どう解釈するか?
まず、ヤツカミヅオミツノという神の名前。
八束水御水野
あたりが語源だろうか? これだと、四方八方から貴重な水が流れ込んでくる川や河口や平野やを意味する。ここには、「角」という単語も紛れ込んでいて、龍のイメージも、水に重ねられているようである。
これも、同じ風土記の意宇郡母理郷の条の、越の八口とともに、ヤマタノオロチ神話創出の材料になっていると思われる。
古事記ノート(19) ヤマタノオロチは出雲にいなかった?
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_22.html
国引きをする力持ちの神は、陸から土砂を海辺へ運び、陸地を増やしてゆく川の性格も持っている。国引きは、出雲の四つの場所へと行われるが、これはとくに出雲で重んじられる数、4と8にリンクしている。
そして、出雲に残る伝説の巨人「大人」が、この国引きの神に重ねられている。
国引きの具体的な記述に、漁業と農業から合成されたイメージがあるが、これは別記事で。
砂を集めよ虹のしっぽを埋めるため 夏石番矢
参照
古事記ノート(20) ツムガリの大刀とは?
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_23.html
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