まず、出雲地方では、現在も、南海から黒潮に乗って北上してくるセグロウミヘビを、日本海からすくい上げ、干して御神体にしている。そういう神事が毎年秋行われる。龍蛇神は退治される対象ではなくて、崇拝される対象。この龍蛇神は、大和の大神神社にも祀られている。
ヤマタノオロチを退治するのに使われる十拳剣が、退治後大切にされないし、いまどこにあるかの記述がないのもおかしい(『日本書紀』一書にはある)。退治されたヤマタノオロチの尾から出てきたツムガリの大刀である草薙の大刀に価値を認めているのも不審。
これは、十拳剣が銅剣であり、この銅剣を使って、より鋭利で頑強な鉄剣を得る神話としても解釈できる。
この種の竜もしくは大蛇退治譚は、国内外に多種多様に存在し、出雲に限定されない。なぜ出雲神話冒頭にあるのか?
出雲の龍蛇神制圧を暗示するヤマタノオロチ退治を、後の天孫族による出雲制圧の伏線として置いたのではないか?
出雲神話は、『出雲国風土記』に微細な断片が垣間見られるように、記紀神話とはまったく別の天地創造から始まるものが存在したのではないか?
『出雲国風土記』「意宇郡母理郷」の記事に、オオナモチが越の八口を平定したとある。オオナモチをスサノヲに置き換え、越の八口をヤマタノオロチに置き換えたのではないだろうか? 出雲開拓はオオナモチが行ったと、『出雲国風土記』は記している。オロチ退治以降の『古事記』出雲神話の主人公は、スサノヲではなくて、オオナモチ(オオクニヌシ)。
『古事記』のヤマタノオロチ退治は、稲作地帯の水を含む未開拓の自然の猛威の制御を語る。中国南西部やベトナムに類話がある。
昼寝していた波が飛び出す大蛇の断面 夏石番矢
参照
古事記ノート(18) 天の死と更新
https://banyaarchives.seesaa.net/article/201212article_14.html
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