『古事記』ノート(5) 神代七代1

『古事記』は、口伝の部分もところどころ残しながら、まとめあげるのに苦労した文字記録。そこにおいて、神々の登場順序は、意図的であり、無意味ではないはずだ。

神代七代は、「独神」(ひとりがみ)の、国之常立神と豊雲野神から始まる。二神は、対偶神(夫婦の神)ではないが、なぜこのように並べる必要があったのか。

これは、この後に続く神々の配列から、一連の流れを読み取れば理解できるかもしれない。結論から言えば、日本列島へと海から接近して、上陸し、定着しようとする人々の記憶がここにある。

まず、国之常立神。「常立」(とこたち)は、常にしっかりとそびえる巨岩だろう。現在も日本の南から北に残る「立岩」の神格化。これは、海からやってくる人たちの目印になる。抽象的な神ではないだろう。天之常立神ではなく、国之常立神から、神代が始まる。「天」ではなく、「国」であり、そこに具体性、具体的な日本列島が想定されている。

次の豊雲野神は、その大きな岩のうしろに控える漠然とした広い野原、陸地。船からの視界が、これら二神の配列によって連想される。

    大岩と野原が見えれば船に歌  夏石番矢

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