2月23日(土)午後、生野毅の俳句朗読と上野雄次のはないけ所作を、茅場町に見に行く。途中、東京メトロ東西線が、強風のため、運休と知る。大手町からタクシーで、永代橋そばの会場、Gallery Maki へ到着。ここは、江戸時代の霊岸島。あたりは暴風が吹き荒れていた。
この二人のパフォーマンス、緊張の連続。観客およそ30名。
6時半からの約1時間20分の上演終了後、打ち上げを午後11時までつきあう。
上野雄次のはないけは、意外な暴力性を即興で展開。あきさせない。
薔薇を壁に釘打ちする。
電球の光をシェイドで変幻自在に変化させる。
会場を暗闇にする。
天井から針金を吊るし、そこに枯れ枝を折って籠を作る。
それに電球をしこむ。
籠を錆びたブリキでかこう。
この即席ランプにワインを流す。
ショートさせる。
ガスバーナーで薔薇を焼く。
俳句朗読者に布を掛ける。
圧巻は、電気コードを投げ縄にして、電球を壁にぶつけて粉砕する。ガラスの破片は奇跡的にも、観客席へ飛ばなかった。これは運と天性の勘のなせるわざだろう。
これに対して、生野毅の俳句朗読は、吃音(断片性)と反復で、はないけの暴力性を、クッションのように受け止めていた。「ジャク、キョウ」という押さえた声が舞台裏から聞こえる。登場して、舞台を四角に回り、能のように、抑制した動作を示す。俳句には、即興の自作に混じって、飯田龍太、富沢赤黄男、池田澄子なども引用。私にも思い出深い「ままこのしりぬぐい」という一語がとくに記憶に残る。
俳句朗読の可能性を探っていた私は、とても刺激的な印象を保って、帰路につく。
東武東上線駅を出ると、嵐はおさまり、満月一歩手前の月が、澄んでいた。
暴風から始まり、パフォーマンス、そして澄んだ月まで、一連の美しくも暴力的な劇のようだった。
濃い影薄い影折られ吊るされ焼かれる
すべての枝は墓赤ワインの滝
薔薇焼かれ吃音の俳句生まれる
電球にワインの洗礼飛び散る花
弱強強電球炸裂薔薇燃焼
駅前の月は嵐を吸収す 夏石番矢
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