ラトヴィアの苦難の詩

「百万本のバラ」の原詩の作者で、ラトヴィアの詩人、レオンス・ブリエディス(Leons Briedis)は、絵葉書やパンフレットとともに、自作の詩の英訳を6篇郵送してきた。もしも、和訳されるならば光栄だと手書きのメモを付けて。

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早速、これらの詩を和訳してみた。なかなかいい詩だ。

そのなかの1篇を、活字になる前に紹介しておきたい。



レオンス・ブリエディス
和訳 夏石番矢

……そして一晩中船は前進する
暗闇の獣の目のように

ガラスの破片が傷に食い込むように
痛々しく、致命的に

すべては血を流す、だがなぜ君は
痛みからあとずさるのか?

白い月の櫂を持って
一人の見えない渡し守が待つ

この詩に何を読み取るかは、読者の皆さん次第。独立以前のラトヴィアの苦難、人生の苦難などを思わせる含蓄の深い詩。決して後退してはいけないという勇気を与えられる。
この詩はまた、次の戦後俳句を連想させる。

    暗闇の眼玉濡らさず泳ぐなり  鈴木六林男(『谷間の旗』、1955年)

ラトヴィアはまだ訪れたことがないが、北にあっても比較的暖かく、湖の美しい国のようだ。いつの日にか訪れてみたい。

この記事へのコメント

  • 風花

    我が家から見える真夜中の海は、まさにこの詩の情景そのものです。でも意味が深~い!
    2007年01月10日 18:17
  • Fujimi

    海の見える家はいいですね。わが富士見市の自宅は、増築して、月も見えなくなりました。
    2007年01月10日 20:00
  • Fujimi

    M大学の同僚、女性助教授K・Nさんは、中二のときに、ラトヴィアに行ったことがあるとのこと。きれいな国だそうです。
    2007年02月09日 00:55
  • Fujimi

    2008年9月に、ラトヴィアを含むバルト三国を訪れます。
    2007年12月26日 03:02

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