「あの姫」と「あの脳」  八木三日女俳句の本歌取り

20代に出会った八木三日女から学んだものは少なくないが、私の第11句集『右目の白夜』(沖積舎、2006年7月、本体価格2800円)には、はっきりと八木三日女の俳句が下敷きになった句がある。

『右目の白夜』については下記参照
書店
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9980964987
http://item.rakuten.co.jp/book/4083617/
書評
http://www.geocities.jp/ginyu_haiku/publication/righteyeintwilight.htm
ブログ記事
村上護「季のうた」
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200610article_1.html
冬の旅
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200611article_13.html
ディミータル・アナキエフからのメール
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200612article_2.html

    あの脳この脳構造改革また来年  夏石番矢

これを、句集『右目の白夜』収録以前に、村上護氏は、「信濃毎日新聞」2002年12月21日付けの「けさの一句」で取り上げてくれた。トップページに掲載されている連載コラム。

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私の俳句は、小泉改革への批判の1句であり、小泉改革を病的に支持する日本人への風刺の1句。それを、村上氏は、発表された「俳壇」2002年4月号掲載の、特別俳句50句「復活」から見付け、適切なコメントを書いてくれた。
しかし、さすがの村上護氏も、次の俳句の本歌取りとは気が付かなかったようだ。

    あの姫この姫脳薄ければ玉椿  八木三日女

これは、八木三日女第4句集『石柱の賦』(現代俳句協会、1985年)に収録されている。

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八木三日女でなければ書けない、痛快な1句。外見は美しいが、中身のない女を笑い飛ばす。5・7・5音ではなく、8・7・5音で書かれ、リズムも軽快。俳誌「花」に掲載されたときから、忘れられない魅力をそなえた1句だ。浮かれた女性を、知的な女性が、ユーモラスに笑い飛ばしている。フェミニズムという甘えも、八木三日女は笑い飛ばすだろう。男女は同質ではないが、同等なのである。

三日女俳句は、一見、優雅に「あの姫」で始まるが、私の句は、いきなり「あの脳」で始まる。そして、いささか投げやりに、無責任に、「また来年」で終わる。
ほんとうの構造改革など、小泉純一郎首相も、日本国民も望んではいなかった。小泉純一郎は、政策の「せ」の字も、また法案の日本語も理解できない政治家だった。

白痴化と愛国心
https://banyaarchives.seesaa.net/article/200610article_16.html

小泉マジックが醒めて、私たちは荒涼とした野原に放り出されているのに気付く。「格差社会」と言われているが、いまはまだいいほうだ。もっとひどい「格差社会」になるだろう。
個人の努力など報われず、既得権を守ろうとする愚劣な権力者たちが、日本社会を衰退へと導いている構図は、ますますあらわになるだろう。

私の俳句の最後、「また来年」の口調には、昔のNHK子ども向け番組「ものしり博士」の最後の掛け声、「ケペル先生、また来週」の記憶が響いている。私たち日本国民は、まだまだ子どもなのだ。何を学ぶべきなのだろうか。

ものしり博士
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Miyuki/2049/keperu.html

日本国民であることが何であるのか、日本社会のどこに構造的欠陥があるのか、現代がどういう時代なのか、自分が何をすべきなのか、これらのことに答えられずに、「構造改革」の連呼にだまされた哀れな人々。これが昨今の日本人の実態である。

八木三日女は、一部の美女だけを笑い飛ばしていればよかったが、小泉純一郎政権下の日本では、すべての国民を笑い飛ばさなければ、私のもやもやは晴れなかった。右目の白内障も、手術が必要なほど進行していた。

そのもやもやは、現在の安倍晋三首相によって晴れるどころか、不明確な発言を繰り返すこの首相によって、ますます混迷が深まっている。また、日本人も、厳しい現実に立ち向かうことよりは、そこから目をそらそうとしている。

俳句は、脳天気に花鳥風月を詠んでいればいいのではなく、社会批判、時代批判もできるのである。批判が笑いを生み、読者の心のもやもやが少しでも晴れれば、それは作者にとっての幸福である。
私のこういう社会批評俳句も、八木三日女らの前例があってこそ可能となった。

追記
1 下のコメントにあるように、野口雨情作詞「あの町この町」が、八木三日女の「あの姫この姫」の本歌かもしれない。
「あの町この町」  この曲のメロディーも流れるサイト
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/anomachi.html


中村草田男の処女句集『長子』(昭和11年=1936年)に、次の句がある。

    夕桜あの家この家に琴鳴りて

これが、八木三日女の念頭にあったかどうかは、さだかでない。

この記事へのコメント

  • 風花

    あの姫この姫脳薄ければ玉椿
    八木三日女の俳句は痛快ですね!
    そして、あの町この町日が暮れる~♪の歌が浮んできましたよ。
    2006年12月12日 07:47
  • Fujimi

    三日女さんの俳句も、本歌取りだったんですね。
    その唄の題名ご存じだった、お教えください。
    2006年12月12日 08:58
  • 風花

    題名は、「あの町この町」です。
    作詞 野口雨情
    作曲 中山晋平
    2006年12月12日 10:05
  • Drudstore cheap

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    :-)
    2007年06月01日 18:24
  • Fujimi

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  • Ritalin

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  • birabidosqc

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